せっかくはてなに居るんだから2010年上半期ライトノベルサイト杯に投票しよう、そうしよう

 ネットで孤立していることの利点の一つは、1年放置してもスパムの一つも来やしないことだよね!
 もはやこの場所は最近ますます個人的に面白くない傾向に進んでいるラノサイ杯の順位を少しでも自分寄りの結果に導くための票を投じる場所となってしまった。持ってて良かったダイアリー!
 ……と思ったのだが、今年は去年の新人賞受賞作の最後の分を五月末にやっと読み終わったような状況で、対象作品にいたってはおそらく積んでる数のほうが多いという体たらくだったりする。
 今年は八月末までに約52冊読んでいるのだが、その中に1〜6月刊のライトノベルが11冊しかなかったでござる。……ジューイッサツシカナカッタデゴザルー。もう全部入れるか!
冗談はさておき、とっとと11冊の中から挙げていこうか。

新規部門

神さまのいない日曜日 (富士見ファンタジア文庫)

神さまのいない日曜日 (富士見ファンタジア文庫)

あらすじ:
十五年前。神様は世界を捨てた。
人は生まれず死者は死なない。
絶望に彩られた世界で死者に安らぎを与える唯一の存在“墓守”。
「今日のお仕事、終わり!」
アイは墓守だ。今日もせっせと47個の墓を掘っている。村へ帰れば優しい村人に囲まれて楽しい一日が暮れていく。
だけどその日は何かが違った。銀色の髪、紅玉の瞳。凄まじい美貌の、人食い玩具と名乗る少年―。
その日、アイは、運命に出会った。
「私は墓守です。私が、世界を終わらせません!」
世界の終わりを守る少女と、死者を狩り続ける少年。
終わる世界の中で、ちっぽけな奇跡を待っていた―。
大賞受賞作登場。

[第21回ファンタジア大賞<大賞>]
【10上期ラノベ投票/新規/9784829134771】
 そこそこ票が集まってるかと思ったら対して集まってない……だと……!? 去年の新人賞消化の合間に読んだら泣きたくなるほど質を高く感じたというのに!
 今年の新人賞受賞作はこれとヴァンダルしか読んでないけど、去年の新人賞受賞作50冊を含めて一冊だけ選ぶとしたらこれだろう。少なくとも、新人としては上位5%内の質なのは間違いない。物語を作品たらしめる要因への理解力と実行力が抜きん出た今後が楽しみな作家。二巻積んでるけど!
 このレベルの本が去年の新人賞にももう少しあったらなあ……。
 あとこの作品を読んでいて、著者自身が出演した『神様のいない日曜日ラジオ』を聴いていない人はぜひ聴きましょう
第19回Something Orangeラジオ放送中に使われたスレッド
 たぶん作品への思い入れが五割増しになるし、なにより、一冊の本が紡がれた時、その裏にどれほどの語られなかった物語が込められているのかということをこれほど実感できる機会はそうはない。


ヴァンダル画廊街の奇跡 (電撃文庫)

ヴァンダル画廊街の奇跡 (電撃文庫)

あらすじ:
人は誰もが、心の中に一枚の絵を持っている───。
統一された政府により、様々な芸術が規制を受け始めた世界。
しかしそんな世界各地の壁面に封印されたはずの名画が描き出される事件が起こる。
  芸術に、その自由を!
『Der Kunst Iher Freiheit!』
絵とともにそう書き残していく『アート・テロリスト』を、人々は敬意をこめて『破壊者(ヴァンダル)』と呼んだ。
政府を敵に回すという危険を冒してまで彼らが絵を描く理由とは。
そして真の目的とは───?
第16回電撃小説大賞<金賞>に輝いた、『人』と『世界』と、それを繋ぐ『絵』の物語、登場。

[第16回電撃小説大賞<金賞>]
【10上期ラノベ投票/新規/9784048683241】
 対して票が集まってないだろうと思ったらやはり集まってない……だと……!? まあそうだろうなあ。
 電撃の金賞はこれで三年続けて一般よりのライトノベルともいうべきものが取っていて、どれも質はなかなかのもの(やたらペンネームがカッコいいのも共通)
 ただこの作品の不幸は、絵を発注した人間が、絵で釣った後のことを考えていなかったという点に尽きる。
 ラノベの絵として評価するなら中。塗りが素晴らしいモノクロだけなら上。だがこの作品の絵にするにはいくらなんでも可愛らしすぎる。
 いや、魅力的な絵を付けるという行為は作品の啓蒙に繋がるとても良い行いなのである。その点で言えばこの表紙は正しい。
 けれどこの表紙を見て買った客は、この物語を読んで喜んだだろうか。正直疑問符が付くところだ。
 そしてこの物語を喜ぶ客は、この表紙を見て購入するのだろうか。やはり疑問符が付くところだ。
 前年の銀賞たるロリきゅーぶ!もといロウきゅーぶ!はスポ根とロリ根を混ぜ混ぜした良作小説にスポ根ガン無視の絵を付けて宣伝を打った結果、見事商品的にも作品的にも評価されるに至った(なお自分はそういう作品を半分ないがしろしたやり方は嫌いである)
 確かにおもいっきしレーベル層と乖離した作品だけに、そういう売れそうな流れを作りたかったのだろうけど、残念ながら今作品にロリは必要なかったのだ。小学生ならともかく、設定上大人のインターポールまでロリ顔に描かないでほしい。文中でまったくロリっぽい要素がないじゃん!
 更に言うなら、この作品は二巻もすでに読んだのだが、二巻を買う際に少し躊躇した。
 その理由が、なんとあらすじだったのだ。
 この二巻のあらすじの内容は、自分が予想していた内容とあまりに違ったのである。「えっ、こっちの方向に進むの?」と。そして「ないわー」とも。
 だがしかし、実際に読んでみるとまた驚いた。なんとあらすじに描いてあったのは全て最終章(正確には第四章)の話であって、全体としてみると一巻から方向性はまったく変わっていなかったのだ。なんだったんだあらすじ(ついでに言うと口絵のシーンも一章・四章・四章というアンバランス構成だった)
 そして四章自体どちらかというと次巻への『積み』の章であり、あらすじでは今巻メインっぽかった新キャラも顔見せだけ。一巻を気に入った人が望むとおりの内容だったのである。
 それではこの小説以外の部分での四章偏重はなんだったのかというと……やはり絵と同じ理由だったのだろう。つまりは『釣り』である。
 そもそもこの巻はあらすじを付けづらい巻だった。前巻で主人公の当初の目的が果たされ、現在の目的がかなり曖昧な概念になってしまった結果、大枠となる物語が弱く、その枠とは関係のない短編が三章続く構成。話がはっきり進展しているのは四章だけであり、そこにあらすじの焦点を合わせる気持ちも、それを大仰に書く目的も、分からんでない。
 けれど、これは二巻。二巻なのだ。あらすじを読むものの多くは一巻を読んでいて、かつ二巻に興味を持っている人間。はたしてこのあらすじは、そういう人間たちの求めていたものだったのだろうか。まだ一章ずつ話の大筋を書く構成の方が一巻を買った客には効果があったのではなかろうか。たらればは尽きない。
 ヴァンダルの二巻は今年の電撃大賞関連のなかでもダントツで売れなかったという噂があるが、その影にはこういう要因も絡んでいたんじゃないかと自分は思うのだった。広報行為全般が裏目に出た結果がこれだよ! 全部自分の妄想だけど。
 あとなぜか一巻も二巻も二話が良い作品。この調子で次も二話が面白かったら正真正銘の二話作家だなあとか思いつつ、音沙汰がない作者の次の作品が出ることを祈って応援してるよと言いながら新規部門は終了。
 ……などと書いたが、どうも11月に三巻が出るらしい。大阪屋初週236位で続刊出すって……うむ、俺得ということにしておこう。


【10上期ラノベ投票/新規/9784048686051】

なれる!SE 2週間でわかる?SE入門 (電撃文庫)

なれる!SE 2週間でわかる?SE入門 (電撃文庫)

あらすじ:
平凡な社会人一年生、桜坂工兵は厳しい就職活動を経て、とあるシステム開発会社に就職した。
そんな彼の教育係についた室見立華は、どう見ても十代にしか見えないスーパーワーカホリック娘で!?
多忙かつまったく優しくない彼女のもと、時に厳しく指導され、時に放置プレイされながら奮闘する工兵。
さらには、現場を無視して受注してくる社長のおかげで、いきなり実際の仕事を担当させられることになり―。
システムエンジニアの過酷な実態をコミカルに描くスラップスティック・ストーリー、登場。

 意外なほど票が入っていた。なんなんだいったい。いやこういう界隈でウケそうな本だけどさ、つい葉桜の時はどこに居たんだよと言ってしまいたくなる……葉桜の時はどこに居たんだよ!
 去年の新人賞をすべて読み終わった後、最初に読んだライトノベル。そして自分がライトノベル好きだったことを久しぶりに思い出した一作。つまり新人章受賞作の九割はゴミごめんなんでもない。
 見事なまでに真面目な売れないっ子路線を突き進んでいる氏の未来に幸多からんことを願う。ついでに希少な『とことん面倒見のいいツンデレ』書きとしての未来も。

既存部門

一巻のあらすじ:
ミスマルカ王国の王子マヒロは、勉強も剣の訓練もせず、夜遊びばかりのぐーたら王子。いつも近衛騎士のパリエルに叱られてばかりいた。
そのミスマルカに大陸制覇を狙う魔人帝国グランマーセナルの精鋭軍団が迫る。軍団を率いるのは帝国随一の戦姫ルナス。
家臣たちが徹底抗戦を叫ぶなか、国を託されたマヒロは「話し合いで解決しない?」と腑抜けたことを言い始め…
絶体絶命ミスマルカの運命は!?王道“系”ファンタジー堂々の開幕。

【10上期ラノベ投票/既存/9784044266233】
 この巻に来て、もはや自分の林トモアキ氏に対する感情は好きを通り越しファンを突き破り信者を超越して師と仰ぎ遂には前世からの宿敵にまでたどり着いてしまった。前世からの宿敵。邪気眼ここに極まれり!
 そもそもミスマルカシリーズは紋章編(3巻〜)の始まりと同時に遂に作者が『本気出さなくても売れる』ことに気づいてしまってからというもの、巻を重ねるごとに急速に凄みが失われていき、ぶっちゃけこのシリーズもうだめかもとすら思っていた。
 だがやはり氏は、奴は違った! 6巻あとがきで『次は一回本気出す!!(原文ママ)』と宣言し、その言葉通りの作品を世に送り出す! それがあの漢の生き様よ! そして紋章編が終わったいま、奴の前に敵はない! 次の敵を自分で作りそうだけどな!
 でももうちょっと本気出してない巻もどうにかしてほしいもんだ。安定してそこそこ面白くはあるけど、4巻も本気出てれば信じられないほど面白くなってた気がする。
 そんな前世からの宿敵たる氏の作品をみんな読めー。初めて読むならマスラオかミスマルカから入るべし。メイド燃えだからってお・り・が・みから手を出して轟沈しても知らないぞ。つまらなくても三巻分イッキできるタイプならそれも良いけど。


一巻のあらすじ:
ネゴシエーション・コメディ開幕!!
憧れの幻獣調停員となった深弦。
でも、出会う幻獣は期待の斜め上をいく超個性的な面々ばかりで!?

「演奏会ってことは、歌ったり楽器を弾いたりするんですか?」
「しますよー。見てみますか?」
そう言って目の前の美しい人魚が岩陰から取り出したのは――なぜか一台のノートパソコンだった!?
「電源はそこにラインを引いてるです」
「インフラの整った砂浜だなぁおい!」
幻獣が棲む島オルキヌスに調停員として赴任した稲朽深弦。その職務は、オルカ間のトラブルを調停することだ。
だが、実際に出会うオルカは予想の斜め上をいく面々ばかりだし、師事するはずの先輩調停員・秋永壱里は失踪中!?
言葉を武器にオルカたちとわたりあう、駆け出し調停員のネゴシエーション・コメディ開幕!!
第1回GA文庫大賞・奨励賞受賞作!

【10上期ラノベ投票/既存/9784797359343】
 去年のラノサイ杯で一押しした新人の作品は、4巻目にしてまず連載でしか見られないような見事なまでの打ち切りエンドを迎えた。
 まあしょうがない。しょうがない。作品にまったく進歩が見られなかったのだから、しょうがない。
 結局この作品は4まで数を重ねてもなお、1の頃と比較して良い部分がさらに良くなったわけでも悪い部分が改善されたわけでもなかった。戸部淑氏の絵の質に追いつける日は来なかった。そういうことだ。
 同じ既刊投票でも質は雲泥の差だが……なんというか、未練だ。ほかに一票入れてる人が居たならこの文章も書いてなかっただろけど、こういうのは観測した誰かが残さないと、ね。
 鳥羽徹《とばとおる》氏の次回作にご期待ください。期待してるよ。



以上の五作品に投票ー。
てかなんでヴァンダルなんかにこんな量書いてしまったんだ自分は……。
今回票が入ってる作品の中にも積んでるのがたくさんあるので、これから「なんで9/5までに読んでなかったんだウボァー!」とかなりそう。来月締め切りの『このライトノベルがすごい!2011』までにもうちょっと消化しよう、そうしよう。